景色
初めて公式戦の指揮を取った。
寒空の下、海風が強く吹き付けるピッチで試合は行われた。
テクニカルエリアで僕は身振り手振りを使いながらチームを指揮した。
残念ながらチームは負けてしまった。
正直、自分は何もできなかった。
自分がどれだけちっぽけな存在なのかと思い知った。
勝つことは難しい。
チームを勝たせるのはとても難しい。
監督ってこんなに孤独で様々な葛藤があり、刻々と時間が進むゲームで迅速に適切な判断をしなくてはならないものなのかと。
考えれば考えるほど発する声は小さくなり、選手の反応も薄い。
それが選手達のプレーに現れる。
どこか元気のない選手達、プレーもぎこちない、選手間のやりたいことが噛み合わない。
選手達の頭が全く働いてないように感じられた。
自分も頭が働いてなかったかもしれない。
目にした景色に行動を合わせているだけのようなリアクションなプレー。
それでは一歩出遅れてしまう。
勝つために、ボールを奪うために、相手のゴールへ向かうために、相手のプレーの一歩先を予測しなくてならない。
監督も起こりうるであろうプレー、展開を予想しながら戦術、交代選手の投入のタイミングなど考えなくてはならない。
自分は考えられていたか。
考えられてはいなかった。
与えられたゲームプランを遂行するで精一杯だった。
ゲームプランはあくまでプラン、予定だ。
起こりうる可能性があることを考慮して考えたプランだ。
必ずしもその通りに行かないのがサッカーだ。
だからうまく行かない時に、変える決断とその決断に自信を持つことが重要である。
今回の試合でいつもと違う景色を見ることによっていつも見えなかった部分が見えた。
試合に負けたのは悔しいけど、選手達そして、自分自身がこれからもっと成長するために必要な負けではなかったかなと思う。
そんな甘くない世界だけど自分を信じれるのは自分しかいないし自分を慰めるのも自分しかいないのである。
負けをネガティブに捉えてしまったら、そこからは何も生まれない。
負けをポジティブに捉えて次の試合に活かすのだ。
失敗を失敗で終わらせず失敗を生かす、だから人は成長する。
今、世の中で素晴らしい功績を残した人は沢山の失敗をしているし、ときには批判や罵倒を受けてきて今そこにいる。
成長に必要なことは成功体験だけではない。
ときには失敗やうまくいかないときも必要だ。
ただ、そこにはバランスが重要である。